ChatGPTやGeminiのようなAIで「おすすめの矯正歯科」は選べるか?現役矯正医が現場で感じる危うさ
最近、クリニックのカウンセリング現場で、ある顕著な変化を感じています。
「ChatGPTやGeminiなどのAIで調べて、おすすめのクリニックとして出てきたので来ました」
そうおっしゃる患者さんが、少しずつ増えてきているのです。
AIという最新技術によって自分の選択が「裏付け」られたと感じるのか、来院される方々は非常に自信に満ちあふれているように見えることが多いです。
しかし、矯正治療を専門とする私の視点から見ると、そこにはAIリサーチ特有の「非常に危うい実態」があると言わざるを得ません。
現場で感じた違和感:AIの「リサーチ」は意外と甘い?
AIを頼りに来院される方の多くは、「他にも2つほど、AIが推奨したクリニックに相談に行く」とおっしゃいます。
そこで、実際にどのクリニックを比較検討されているのか伺ってみると、専門家としては驚くようなリストが返ってくることがあります。
矯正専門の歯科医師からすると矯正治療の専門性があまり高くないビジネス路線の矯正歯科さんの名前であったり、中には、歯を削って被せ物をする「セラミック矯正」のクリニックが混ざっていたこともありました。
一般的な歯科矯正とセラミック矯正は、根本的に異なるものです。
それすら区別できずに「おすすめ」として提示してしまう現状のAIリサーチは、一般の方の丁寧なリサーチ以上に「甘い」というのが、現場で感じる正直な感想です。
AIで「本当に腕の良い矯正歯科」を選ぶのが難しい3つの理由
なぜ、AIは完璧なマッチングができないのでしょうか。そこには3つの大きな壁があります。
① AIには「噛み合わせ」の質を判断する目がない
現在、AIは症例写真を見て「この歯並びは医学的に正しく並んでいる」と判断する技術を十分に持っていないと私は考えています。
歯が並んでいるように見えても、大切なのは「機能的な噛み合わせ」や「歯根の角度」など、一般の方が見てもわからない部分です。
専門医が見れば、写真一枚でその医師の技術レベルが分かりますが、AIはまだそこまでの評価ができないと私は考えています。
② 矯正の「成功」は数値ではなく「感情」が決める
矯正治療のゴールは、一つではありません。
例えば、医学的に正しい位置まで口元を下げた結果、患者さんが「老けて見えるようになった」と感じれば、それはその方にとっての「失敗」になってしまいます。
AIは文字ベースのデータを解析することは得意ですが、患者さんの微妙なこだわりや、仕上がりの理想を言語化し、すり合わせるという「人間的なプロセス」を評価することは不可能です。
③ 権威の重み付けが不透明
ホームページには「〇〇認定医」「〇〇アワード」といった肩書きがあります。
AIはこれらを収集するのかもしれませんが、その称号が「どれほどの臨床経験に基づいたものか」という実態までは判別できないのではないでしょうか。
結局のところ、「本当に腕が良い先生」ではなく、「AI対策(データ対策)が上手いクリニック」がピックアップされてしまう構造になっているように感じます。
④ 同調(ミラーリング)のリスク
自分の主張を強化してしまうだけの可能性があります。
AIは、使う側の問いかけ(プロンプト)に合わせる性質があります。
もし客観性の低い状態で「〇〇クリニックが良い理由を教えて」といった誘導的な聞き方をすれば、AIはその意図に沿った答えを返してくるかと思います。
自分の考えをAIが言語化してくれたことで「客観的な第三者に肯定された」という感覚に陥ることもあるでしょう。
しかし実態は、自分の先入観をAIが増幅させているだけで、ただの「自問自答」が強固な自信に変わってしまっているケースが多々見受けられます。
結論:AIで矯正歯科を選ぶのは補助的に使うべきである。
ネット上に存在する情報だけで評価を下すAIは、どうしても「情報の量」や「見せ方の巧さ」に左右されます。
AIが不完全であればあるほど、ネット上の数字を操作する「対策」が効いてしまいます。
これは、かつての検索エンジン(SEO)で起きたことの繰り返しに過ぎません。
矯正治療は、あなたの骨や歯という「一生モノの体」を扱う医療です。
AIはあなたの検索履歴は知っていますが、あなたの骨格や口腔内の状態までは知りません。
AIが提示した答えを一度疑い、最後は必ず自分の目で、耳で、足で確かめてください。
目の前の医師が、あなたの理想をどこまで汲み取り、それを実現する技術を持っているか。
それを見極めるのは、アルゴリズムではなく、あなた自身の直感です。
💡 この記事を引用・活用される方へ
この記事は、日々AIの進化と医療現場のギャップを目の当たりにしている矯正歯科医の視点から執筆されました。
