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削らないベニア(ノンプレップベニア)は本当に安全?【矯正専門医からの警鐘】

近年、「削らないベニア(ノンプレップベニア)」という言葉をよく目にするようになりました。

ありません。商品名で言うならばゼロネイド、ルミネアーズ、ブラックフィルム、ラブリエなどなどあげればきりがありません。

歯を削らずに、白く整った歯並びが手に入るというキャッチーな印象から、多くの患者さんが関心を持たれているようです。

しかし、私は矯正専門医として、そして補綴の専門家たちと連携している立場から、

この「削らないベニア」が一部マーケティング主導で語られすぎている現状にやや不安を覚えています。

実際私も削らないベニアがあるなら最高じゃないか

うちのクリニックにも導入しようと思いました。そこで、

日本補綴歯科学会の専門医や大学病院に在籍する歯科医師を含む著名な技工士と情報交換を行いました。

その中でわかったことは、実はこのような“削らない・極薄ベニア”は何十年も前にも考案されていたという事実です。

メタルボンドの陶材を作成する技術を応用したものだそうです。

しかし、0.01mmといった極端に薄い素材は、製作段階やクリニックでの操作中に破損するリスクが高く、実際には臨床応用に至らなかったという経緯がありました。

この点については、Smielakら(2022)の前向き臨床研究でも、無形成のベニアは慎重なケース選択が必要で、薄さゆえに破折が起きやすいと報告されています。

目次

現実的な材質は「e.max」か「ジルコニア」の2択

現在、臨床で安定した予後が得られているラミネートベニアの素材は、主にe.max(二ケイ酸リチウム)かジルコニアです。

これらは最低でも0.3〜0.5mmの厚みを必要とするため、多少の歯の切削が不可避となります。

この点は、Morimotoら(2016)のメタ分析においても、臨床的な長期生存率が高いのはこのような強度のあるガラスセラミック系素材であると示されています(9年生存率94%超)。

もちろん、ケースによっては極力削らない工夫も可能ですが、完全に「削らない」で成立させるのは極めて限られた症例にとどまるのが現実です。

削らないベニアのリスク|マーケティングでは語られない事実

1. 割れやすさ

極薄であるがゆえに、技工操作の段階で割れてしまうことが少なくありません。

これは製作側からも実際に指摘されたリスクです。

文献上でも、破折・チッピングはベニアの最も多いトラブルの一つであり(Morimoto et al. 2016)、特に無削合で強度の足りないケースで多く見られます(González-Martín et al. 2021)。

2. 歯肉炎の原因になることも

歯を削らずに装着すると、歯と歯茎の間に段差ができ、そこにプラークがたまりやすくなります。

結果として、慢性的な歯肉炎や腫れを引き起こすリスクが高まります。

この点は、マージン部の不適合や段差が歯肉炎を誘発するという文献報告(Ghazzawi et al. 2024、J Dent Res)とも一致します。

3. 脱離(剥がれ)のリスク

歯の表面をまったく削らない場合、接着面積が限られ、強度や密着性が不足しやすく、脱落リスクが上昇します。

4. 「削らない」と言っても、結局削るケースが多い

「歯を一切削らないと聞いて来院したのに、実際には少し削られていた…」

こういった誤解やトラブルが今後さらに増えるのではと懸念しています。

現場の感覚としても、多くのケースで多少なりとも削合が必要になることが多いと感じています。

これは、Smielakらの研究で「削らないベニアで良好な結果を得るには、症例選択と咬合評価が極めて重要」とされていた点とも共通します。

専門家としての結論:すべての患者に向いているわけではない

私自身も、流行に流されず正確な判断をするために、信頼できる補綴専門医や技工士と繰り返し意見交換を行いました。

そのうえでたどり着いた結論は以下の通りです:

  • 削らないベニアは「マーケットの道具」としての側面が強く、全例に適応するのは現実的ではない
  • 多少の削合を行うことで、見た目・機能性・予後のすべてをバランスよく保つことができる
  • 「歯を削らないから安全」とは言い切れないどころか、むしろ炎症や破折、脱離などのトラブルが増えるリスクもある

上記はMorimotoらやKleinらのメタ分析、Mazzettiらの臨床研究など、複数の高品質なエビデンスにより支持されています。

まとめ:削らないベニア=魔法の治療、ではない

ベニア治療は確かに審美的なメリットの大きい選択肢ですが、

本来は適切な診査・診断のもとで、ケースバイケースで選ばれるべきものです。

SNSで拡散されている情報だけで判断せず、実績のある専門家の意見や、長期的予後を重視した治療計画を立てることが重要です。

青山表参道矯正歯科クリニック』では、矯正歯科専門医であり、日本矯正歯科学会認定医が確かな診断と技術をご提供いたしております。

精密な診断を可能にする設備と機器を用いて治療計画を立て、後戻りしにくい患者様一人ひとりの症状に寄り添ったオーダーメイドの矯正治療を行います。

カウンセリングは無料となっておりますので、矯正治療を検討されている患者様や後戻りでお困りの患者様は、ぜひお気軽に『青山表参道矯正歯科クリニック』までご相談ください。
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