マウスピース型矯正装置でCT撮影は必要?通常のレントゲンとの違いやメリットデメリットなどを紹介
近年、さまざまな歯科治療に利用されるようになってきた歯科用CT。
マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療も例外ではなく、CT撮影を行って口腔内の状況を確認してから矯正治療を開始する歯科クリニックが増えてきています。
しかしCT撮影ではX線を浴びることから、医療被曝を心配される患者様もいるのではないでしょうか。
この記事では、歯科用CTの詳細とマウスピース矯正型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影が有効なケース、メリット、デメリットについて解説します。
マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影を行うことに不安を感じている患者様や、必要性を知りたい患者様はぜひご覧ください。
歯科用CTとは
CTというとまず思い浮かぶのは病院で検査に使用する大きな機械という患者様も多いかもしれません。
歯科用CTは、医科用CTを歯科治療のために改良して作られたものです。歯科用CTを活用することで、歯科治療における診断と治療の精度を大きく向上させることが可能となりました。
ここではまず、歯科用CTの特徴や通常のレントゲンとの違い、歯科用CTでわかることを紹介します。
歯科用CTとは
CTとは『Computed Tomography』、日本語でいうコンピュータ断層撮影法の略で、CT検査はエックス線を使って身体の断面をスライス撮影する検査のことです。
スライス撮影したエックス線データをパソコン上で再構築して、三次元で表示することが可能となります。
これまでCTは大きな病院にしか導入されていなかったため、歯科クリニックでの矯正治療ではCT撮影(3次元)を行わずにレントゲン(2次元)などの従来の検査のみを行うか、必要に応じて大きな病院でCT撮影を行うのが一般的でした。
しかし今ではCT撮影の必要性が徐々に知られるようになり、歯科クリニックでも歯科用CTを導入し、インプラントの手術や親知らずの抜歯など、外科的な手術の場合に、骨の中の状況を3次元的に知るために撮影されることが一般的になってきました。
また、従来では、矯正治療のときに横顔のレントゲンや正面のレントゲンなどの2次元的なレントゲンから分析値を出して、矯正治療を行うことが一般的だったのですが、ここ数年の間でCTデータを使ってより制度の高い矯正治療の治療計画を立てるクリニックも少しずつ出てきています。
通常のレントゲンとの違い
歯科クリニックでレントゲン撮影をしたことがある患者様も多いかもしれませんが、歯科用CTと通常のレントゲンとの違いをご存じですか?
両者のもっとも大きな違いは、画像の『次元』です。歯科用CTは立体的な画像(3次元)であるのに対して、レントゲン(2次元)は平面の画像しか得られません。
2次元画像のレントゲンでは、一方向からしか口腔内を確認できませんが、3次元の歯科用CTでは歯や顎骨の状態をさまざまな角度や位置から確認できるため、顎骨の幅から深さ、奥行きまで正確に把握できます。
CT検査で心配される放射線量については、1回0.03ミリシーベルトとレントゲン(パノラマ撮影)の方が比較的低いです。
使用する歯科用CTの種類にもよりますが、歯科用CTの被曝量は1回0.1ミリシーベルトで、レントゲンと比べて放射線量は多くなります。
ただしこの線量は日本人が一年で自然に浴びる放射線量(1.5ミリシーベルト)や医科用CT(6.9ミリシーベルト)よりも少なく、人体に影響が及ぶことはありません。
歯科用CTでわかること
スライスした画像をパソコン上で組み立て、口腔内を3次元的な画像で見ることが可能なのが歯科用CTです。
歯科医師が歯科用CTで撮影した画像で何を確認しているのかというと、主に顎骨の中にある歯の根っこ(歯根)や顎骨の厚み、顎骨の中の神経の走行、親知らずの位置などです。
歯には歯冠(歯の目で見て見える部分)と歯根(歯の顎骨の中にある部分)があり、顎骨の厚みも年齢や性別、人種、歯の場所などによって人それぞれ異なります。
人によっては歯根がもともと短かったり骨の吸収があったり、親知らずと奥歯が近接していたりなど、解決すべき問題があるケースもあります。
このような場合でも、歯と顎骨の位置を2次元ではなく3次元で把握することで、どのようにしたら効率的に歯を動かせるか、また歯並びを整えるだけでなく長期的に安定させられるかなど、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療で治療計画を立てる場合に非常に役立ちます。
CT撮影なしでマウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療を行うと、歯が顎骨からはみ出して歯根が露出してしまったり、歯肉退縮したりする可能性もあるでしょう。
そのため、そのような事態を引き起こさないためにもCT撮影を行うことが重要になります。
マウスピース矯正でCT撮影が有効なケース
マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影を行うことでより精密な矯正治療が可能となりますが、歯や顎骨の位置関係や形態などを詳細に把握することが特に重要となるケースがいくつかあります。
ここでは、マウスピース矯正型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影が有効なケースを4つ紹介します。
歯を大きく移動させるケース
マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)に限らず、矯正治療では顎骨の中で歯を少しずつ動かしていくため、骨の厚みや量が十分かどうか確認することが重要になります。
そのため、前歯など歯を大きく移動させる必要があるケースでは歯科用CTで撮影した画像を確認して、歯を希望の位置へ動かせるか慎重に検討します。
奥歯を後方へ移動させるケース
出っ歯(上顎前突)や八重歯・乱杭歯(叢生)などの不正咬合の場合は、奥歯を後方移動させることで改善できるかどうか、CT撮影を行って見極める必要があります。
CT画像を確認して顎骨の後方に歯を理想通りに移動させられるだけの骨量がない場合は、抜歯をして歯を後方移動させるスペースを確保しなければいけません。
また、骨量があって抜歯をせずに矯正治療を進めている場合でも、前歯を動かすタイミングによってはこれまで後方に動かした奥歯が前へ戻ってしまう可能性もあるため、矯正治療の途中でCT撮影を行って確認する場合もあります。
埋伏歯があるケース
埋伏歯(歯冠の一部またはすべてが顎骨や歯肉の中に埋まって萌出しない歯のこと)があるケースもCT撮影が非常に重要となります。
埋伏歯はそのまま放置していても自力で萌出することが少なく、歯を引っ張り出す必要があることが多いです。
埋伏歯の位置を把握しておかなければ、周囲の永久歯に悪影響を与える恐れがあるため、埋伏歯があるケースではCT撮影が有効になります。
歯科矯正用アンカースクリューが必要なケース
矯正治療で歯科矯正用アンカースクリュー(歯を引っ張る固定源となるチタン製の小さな医療用ネジ)を用いる場合は、植立を成功させるためには『皮質骨(骨表面の硬い骨)』の厚みとアンカースクリューの歯根との距離が非常に重要になります。
特に皮質骨の厚みは通常のレントゲン撮影などでは測定できないため、CT撮影を行って正確な皮質骨や歯根の間の距離などを3次元の立体的な画像で確認する必要があります。
マウスピース型矯正装置でCT撮影を行うメリット、デメリット
CT撮影はマウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)を用いた矯正治療において、メリットが非常に多い検査です。
とはいえ、検査を受けるにあたってメリットだけでなくデメリットも知っておくことが大切です。
ここではマウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影を行うメリットとデメリットを紹介します。
メリット
以下は、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療でCT撮影を行うメリットです。
- 患者様に治療内容をより深く理解してもらえる
- 被曝量が非常に少ない
- 撮影時間が短い
- 口腔内全体の状態をしっかりと把握できる
- 正確な診断ができる
CTの3次元のデータを使用した画像は、歯科に関する特別な知識をもたない患者様が治療内容をより深く理解するためにも有効です。
矯正治療を行うことでどのように歯並びが改善していくのか、咬み合わせにどのような問題があるのかなど、治療計画をただ口頭で説明するだけでは理解しにくいことも、目で見ながらわかりやすく説明できます。
また、歯科用CTは被曝量が非常に少なく撮影時間も短いため、患者様の体への負担が少ないのもメリットのひとつです。
歯科医師にとっても、口腔内全体の状態を高画質な画像でしっかりと把握できることで、より正確な診断、安全な矯正治療を行うことができるというメリットがあります。
デメリット
歯科用CTにはほとんどデメリットはありませんが、しいていうのであれば放射線による被曝が挙げられます。
とはいえ、上述の通りCT撮影における被曝量は人体に影響するほどの量ではないため、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療を受ける患者様にとってはメリットの方が大きいといえるでしょう。
ただし、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)を用いた矯正治療によるCT撮影にも盲点があります。
CTと連携したマウスピース矯正型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)のシミュレーションを見ると、まるで完璧に矯正治療ができるようになったと錯覚するかもしれません。
しかし、『シミュレーションはあくまでもシミュレーションである』ということが、もっとも大きな問題点です。
また、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)の場合、使える矯正装置がマウスピースのみであることも問題点のひとつだといえます。
実際のところ、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)は、口ゴボやガミースマイルなどの大きな歯根(歯の根っこ)の動きを伴うような矯正治療が苦手です。
しかしCTを伴うシミュレーションでは、まるでそれが理想的に動くかのようにシミュレーションされてしまいます。
つまり、CTとの連携ができたとしても、実際に使える装置は変わらないということです。CTで撮影したところで、ワイヤーでしかできない動きはワイヤーにしかできません。
まとめ
CT撮影はマウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)による矯正治療を受ける場合に重要となる検査のひとつです。
CT撮影をすることによって治療の質や効率が大きく向上するため、矯正治療で患者様にかかる負担を軽減することにつながります。
しかし実をいうと、矯正治療でCTを撮っているからうまいという訳ではありません。
結局、CTで内部の構造が見られたとしても実際の矯正治療での歯の動きが可能か不可能なのか、執刀医の臨床経験における判断力などがなければうまく並びません。
そのため、ひとつのリスクヘッジとしてCTを撮っている矯正歯科を選ぶというのも、矯正治療を受ける場合のひとつの選択肢だといえるでしょう。
青山表参道矯正歯科クリニックでは、マウスピース型矯正装置(インビザライン、エンジェルアライン、スパークなど)をはじめ、矯正治療を開始する際にCT撮影を行って患者様一人ひとりに適した治療計画をご提案いたします。
矯正治療において『診断』はもっとも大切なことです。
都内で失敗しないマウスピース矯正をご希望の患者様は、一度青山表参道矯正歯科クリニックまでご相談下さい。